お金や制度

不妊治療・妊娠・出産にはいくらかかる? 費用の相場や活用できる保険・制度とは

「不妊治療はすごくお金がかかるらしい」
「子育てにお金がかかるから、妊娠・出産で必要な費用をしっかりと把握しておきたい」
「切迫早産の入院が続いて職場を辞めることになった。これからのお金、どうしよう」

様々なケースが考えられる妊娠・出産。どのくらいのお金がかかるのか、気になる方も多いのでは? 自分が利用できる保険や制度を知り、しっかりと活用していきましょう。

※掲載している金額・制度は、2023年6月現在のものです。

不妊治療はどれくらいのお金がかかるものなの?

不妊治療は、2022年4月からは保険適用され、自己負担が全額→3割と大幅に減額されました。それでも不妊治療にかかる費用は、治療内容や期間によって数千円〜数百万円と大きく差があります。

不妊治療には「一般不妊治療」と「生殖補助治療(ART)」の2種類があり、費用も異なります。ここで紹介する金額は保険適用後のものです。

一般不妊治療

タイミング法

1万〜3万円程度

様々な検査から排卵日を医師が推定し、排卵に合わせ性交をおこなう方法

人工授精

1回あたり5,460円、1周期あたり2万〜3万円程度

精液を子宮内に人為的に注入する方法

生殖補助治療(ART)

体外受精

採卵1回10万〜13万円

卵子を体外に取り出し(採卵)、精子を振りかけて受精卵をつくり、女性のカラダに戻す方法

顕微授精

1万4,400円〜3万8,400万円

顕微鏡下で卵子に精子を注入し受精卵をつくる方法

顕微鏡下精巣内精子採取術

73,800円

精子が精液の中に確認できない男性の精巣から、精子を直接採取する手術

このほか、女性側の不妊の原因とも言われている

などの治療にも保険が適用されます。

着床の検査や子宮内膜の検査など保険適用外の検査や治療もありますが、一部は先進医療として認定され、保険と併用できるものもあります。

不妊治療の保険適用には2つの条件がある

不妊治療に保険が適用されるためには、下記のようなルールが設けられています。自分が当てはまるかどうか、チェックしておきましょう。

妊娠・出産でかかる平均費用は?

妊娠や出産は病気ではないため、健康保険が基本的に適用されませんが、最近では一部を補助してくれる自治体が増えています。

まずは妊娠・出産でかかる平均費用などについて、知っておきましょう。

妊娠検診や入院など病院に払う費用は平均50〜60万円

妊婦健診

赤ちゃんや妊婦の健康状態を確認する妊婦健診は、妊娠〜出産までに14回ほど行われます。1回あたりの費用は1回3,000~1万円ほどが相場で、合計約8万円がかかります。(観察が必要な疾患などがない場合)

この金額で検診を受けるためには「妊婦健康診査受診券」が必要です。これは、妊婦健診の費用を市町村など自治体が一部負担してくれる制度。住んでいる市町村へ妊娠届を提出し、受診券を受け取りましょう。

入院・出産費用

出産のための入院費用は平均50万円ほどと言われています。(※1)

自分が理想とする分娩方法や入院中の過ごし方によって金額が変わってきます。例えば、

などの選択で費用は変わってきます。

また、地域によっても入院費用の相場は異なります。出産したい病院の入院費用は、事前にチェックしておけるといいですね。

妊娠・出産に直接関わらない細かな出費にも注意!

どうしても妊娠・出産に関わる費用に目が行きがちですが、医療費以外にも細かな出費が増えていきます。1つひとつ確認しておきましょう。

妊娠中に必要なアイテム

妊娠中、カラダの変化に合わせて必要になるアイテムは様々。例えば、お腹が大きくなってきたときに必要となる専用の下着や、妊娠線予防クリーム、乳頭保護クリームなどのケア用品など。先輩妊婦さんたちは、平均2万円ほどかかっているようです。

育児に備えて必要なアイテム

赤ちゃんを迎えるための育児グッズ。ベビーカーやベビーベッド、抱っこ紐、服、ミルクなど、必要なアイテムによってかかる費用は人それぞれです。家族の生活スタイルに合わせて、ふたりで考えてみてください。

消耗品である紙おむつやミルク代は産後約1ヵ月で平均約8,000円と言われています。

その他の出費

その他、赤ちゃんを迎えると下記のような出費があります。

里帰り出産を計画している人は、パートナーの交通費なども合わせて検討しておくのがオススメです。

申請を忘れずに! 不妊治療・妊娠・出産などの医療に関わる制度・助成金

妊娠・出産には、さまざまな費用がかかりますが、受け取れるお金もあります。今回は、申請するともらえる助成金や補助などの制度をまとめました。しっかりチェックして、少しでもお金の不安を減らしておきましょう。

妊婦健診費の助成

住んでいる市町村の窓口で妊娠の届け出を提出すると、母子健康手帳とともに妊婦健診を公費の補助で受けられる「妊婦健康診査受診券」がもらえます。この受診券を利用すると、妊婦健診費用の一部を補助されます。助成金額は自治体によって異なります。

出産育児一時金

健康保険や国民健康保険の加入者・被扶養者が出産した場合、入院・分娩費として「出産育児一時金」が支給されます。

支給額は、子ども1人につき50万円。(ただし妊娠週数が22週に達していないなど、産科医療補償制度の対象とならない出産の場合、支給額は48.8万円)

受け取り方は、

の2種類があります。

また、出産育児一時金が受け取れるのは出産から2〜3ヵ月後になることがほとんど。病院でかかる費用は、先に自分たちのお財布から支払う必要があるので注意してくださいね。

医療費控除

家族が1年間の医療費の合計金額が10万円を超えた場合、翌年3月まで確定申告をすれば払いすぎた税金が戻ってきます。

妊娠の場合、妊婦健診や検査、入院にかかる費用、病院へ行く際にかかった電車やバスなどの交通費が控除の対象になります。ただし、里帰り出産のための交通費は医療費控除の対象にはならないので、気をつけてください。

高額療養費制度

高額療養費制度は、医療機関や薬局で支払った1ヵ月間の医療費が一定の金額(自己負担限度額)よりも高くなった場合、一部を払い戻される制度です。自己負担限度額は、世帯所得によって異なります。

1ヵ月間の医療費が高額だった場合は何度でも申請が可能です。直近12ヵ月の間に3回以上高額療養費制度の対象になった場合は、4回目から自己負担限度額が引き下げられる特例制度もあります。

対象になる治療は?

対象になるのは、不妊治療にかかった費用や、帝王切開や吸引分娩など健康保険が適用される治療を受けた場合です。また、同じ医療保険に加入している家族が受診した場合は、それらを1ヵ月単位(月初から月末まで)で合算し、申請することができます。

注意点

保険適用外で行った診療の費用は、限度額に含まれません。また、夫婦で別々の健康保険に加入している場合や受診が月をまたぐ場合は、合算できなくなるので注意してくださいね。

申請方法は2種類

出産手当金とは? 失業保険の手続きって? 仕事と妊娠・出産に関する制度

産休・育休の間は収入減が気になりますよね。生活支援のために支給される助成金も抑えておきましょう。

出産手当金

出産予定日の6週間前(双子などの多胎妊娠の場合は14週間前)から、出産した翌日以後8週間までの範囲で休業する期間を「産前産後休業(産休)」といいます。その間の生活をサポートしてくれるのが出産手当金です。会社員の入っている健康保険から支給されます。

もらえる金額とタイミング

基本的に「支給開始日の以前12ヵ月間の各標準報酬月額を平均した額」÷30日×(2/3)。

産休に入る前に申請書をもらい、産後に医師か助産師に記入してもらいましょう。給付されるのは産休終了後。産休中の生活費には充てられないことも覚えておいてくださいね。

育児休業給付金

育児休業中は社会保険料の支払いが免除されますが、基本的には無給。この間の生活をサポートしてもらえるのが育児休業給付金です。会社員の入っている健康保険から支給されます。

対象

母親・父親ともに、給付金の対象です。

このほか、

も対象です。

もらえる金額とタイミング

もらえる金額は、育休開始から180日間は「日給×0.67×育休で休んだ期間(日数)」、181日目以降は「日給×0.5×育休で休んだ期間(日数)」です。ただし、支給開始までに必要書類提出から約2~5ヵ月かかります。

傷病手当金

病気やケガで会社を休んだときにもらえるのが傷病手当金。妊娠・出産時は、妊娠悪祖や切迫流産、切迫早産などで仕事ができず、4日間以上休んだときに支給されます。

もらえる金額とタイミング

もらえる金額は「(日給の2/3)×4日目以降の休んだ日数」です。

申請先は会社の人事や総務、加入している健康保険組合など。診断書の提出が必要になる場合もあります。

退職者の所得税還付申告

赤ちゃんを迎えるにあたって退職した場合は、所得税を払いすぎている可能性があります。

勤務している人は毎月の給料から所得税が天引きされています。この天引き額は前年までの給与を参考に決まるため、必ずしも最終的に納めるべき所得税の金額とは一致しません。そのため、会社員は年末にこの過不足分を精算する「年末調整」の手続きをするのです。

しかし、年の途中で退職した場合は年収が下がるため、結果として税金を多く納めすぎていることがあります。その場合は、所得税還付申告をすることで払いすぎた所得税を還付してもらえます。

対象

退職した方

失業給付金受給期間の延長

失業給付金とは、仕事を辞めた人が受給できるお金のこと。再就職するための間に安定した生活を送ることを目的とした制度です。

失業給付金が受けられる期間は、原則として離職した翌日から1年間です。その期間に妊娠や出産、育児などで30日以上就職ができない場合は、受給期間を延長することができます。延長期間は最長で4年以内。離職後30日を超えたら、ハローワークで失業給付受給期間の延長手続きができます。

受給申請は、産後に求職活動を始めてからおこないましょう。

子どものための助成金・制度

乳幼児の医療費助成

健康保険に加入している赤ちゃんの医療費は、自治体が助成してくれます。助成内容は自治体によって対象となる年齢や金額に違いがあります。

住んでいる地域と別の地域の病院を受診した場合の医療費助成は、自治体によって対応が異なります。里帰り出産をする人は、事前に市町村の役所で確認しておきましょう。

児童手当

子どもが中学校を卒業するまでの間、児童手当を受け取れます。「児童」とついていますが、0才から申請可能です。

基本的な支給額は1人当たり、3才未満が月1万5,000円。申請が遅れるとさかのぼって児童手当を受け取ることはできないため、赤ちゃんが生まれたら早めに申請しましょう。

妊活・妊娠にかかる予算を、ふたりで考えてみよう

実際に自分たちの妊活・妊娠にかかる費用は、次の3ポイントから考え始めるのがオススメです。妊娠する前の早い段階からふたりで方向性を話し合うことで、今後の生活についてリアルに考えることができるはず。

ポイント1:何才までに何人の子どもが欲しいのか?

希望する子どもの人数によって、分娩費用や教育費などをある程度計算することができます。また、第一子を授かりたい時期、子どもをつくるスパンについても計画を練りましょう。

女性の年齢が35才を超えるタイミングが、不妊治療が必要になる1つの判断基準と言われています。自分たちの年齢から、不妊治療費用の可能性なども考えておくことができます。

ポイント2:どんなお産をしたいのか?

「里帰り出産するのか、しないのか?」「最新の医療設備が整った病院を選択するか?」「無痛分娩希望か?」などまずは自分たちのお産がどのようにありたいかを考えてみましょう。妊娠中の状況次第で変更の可能性はありますが、まずは「自分はどうやって赤ちゃんを迎えたいのか」を考えておくことが大切です。

また、人気の産院は分娩施設の予約を妊娠8週ごろで締め切る場合もあるので、早めに目星をつけておくことをオススメします。

分娩費用は医療機関によって異なります。地域による違いもありますので調べておきましょう。

ポイント3:受けることができる制度や助成金はどんなものか?

産休・育休での手当の内容は、それぞれの職場で確認をしてください。出産にともなう助成金については、必ず住民票のある自治体のものを確認してくださいね。

また、妊娠が分かったら、妊婦検診の受診券や助成金などを上手に利用することで経済的な備えをしておきましょう。

予算の検討が、ふたり妊活に向き合うきっかけに

自分たちの希望と現実的な予算に向き合うことは、ふたりのこれからのライフプランを見つめることも繋がります。できるだけ早い段階で知識を身につけ、お互いの希望を話し合ってみてください。ふたりで将来のイメージを共有しながら、妊活に取り組めると良いですよね。

※1 国民健康保険中央会「正常分娩分の平均的な出産費用について(平成28年度)妊婦合計負担額の平均値、中央値(病院、診療所、助産所の合計)」より

【記事監修】

株式会社ファミワン 不妊症看護認定看護師 看護修士

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