妊活ステップ

妊活のポイントはふたりの足並みを揃えること――先輩夫婦の本音と医師からのアドバイス

「妊娠する女性ばかりがつらい思いをしている気がする」
「男性だってタイミング法のプレッシャーがつらい」

妊活を続けるなかで、ふたりの間に温度差や知識格差が生まれることがあります。自分のカラダにおこる「妊娠」に敏感になりがちな女性と、できることが限られているために女性とは違うプレッシャーがある男性。互いを理解し、この差を埋めるのはなかなか簡単ではありません。

「妊娠しづらい体質」だと自覚していたので、結婚後は即妊活スタート

10代のときに多嚢胞性卵巣症候群と診断され、自分が「妊娠しづらい体質」であると自覚していた大島綾さん。そのため、結婚後は夫の和希さんと話し合い、すぐに妊活に取り組んだそうです。

※ご夫妻の名前は仮名です。

約1年の妊活期間を経てお子さんを授かるまでの間、ふたりはどのようにお互いに向き合ってきたのでしょうか。産婦人科医・稲葉可奈子先生のアドバイスとともに、ふたりが歩んできた道のりを振り返ります。

妻・綾さん:卵胞がうまく育たず、定期的な排卵が起こりにくくなる「多嚢胞性卵巣症候群」だとわかったのは、中学3年生のときでした。生理の間隔が数ヵ月~1年近くと長かったため、母に心配されて婦人科で検査をしたんです。それからは定期的に婦人科に通い、治療を続けていました。

その後、28才で結婚しました。「将来的にお子さんを授かりたいのであれば、早めに妊活に取り組んだほうがいいですよ」と医師にアドバイスされたこともあり、結婚後はすぐに妊活を始めました。

まず始めに取り組んだことは、「排卵が起きやすいカラダをつくる」こと。具体的におこなったのは、排卵誘発の治療、それから子宮や卵巣のはたらきをよくするために、血の巡りを改善する漢方薬の内服など。この最初の段階では、完全に私が主体での妊活でしたね。

排卵誘発の治療は、精神的にも肉体的にもつらかったです。始めは病院から処方された排卵誘発剤を内服していたのですが、あまり効果がなかったため、通院しながらhCG注射(排卵を促す注射)を打つ方法に変更しました。

毎朝、病院に寄って注射を打ってから出社するという日々が続いたのですが、注射自体の痛みと毎日病院に行くしんどさが合わさって、すごくつらかったですね…。

稲葉先生のアドバイス

綾さんの場合、10代と早い段階で「多嚢胞性卵巣症候群」と診断されています。そのことを知っていたため、早めに妊活に取り組めたのは良かったですよね。生理は自分のカラダの状態を知るバロメーターになります。気になることは放置せず、早めに婦人科で相談することをオススメします。

妻が得た知識をふたりでシェア、足並みを揃える難しさも

夫・和希さん:そのころの僕は、妻に「しんどかったらやめてもいいよ」「無理しないで」と声をかけるくらいしかできませんでした。彼女ががんばっているのに、僕が「もうやめよう」と決めてしまうのも違う気がしたし、かといって無理につらい思いをさせたくもなかったので、複雑な心境でしたね。

「子どもがほしい」という認識は結婚前にすり合わせていましたが、僕は最初のうちは楽観的でした。「まあ、そのうちできるだろう」と気楽に構えていた。

でも、彼女が通院しながらいろいろ試す日々が続いていくなかで、「妊活って思っていたより大変なことなんだ」という自覚が徐々に芽生えていったように思います。

妻・綾さん:彼はあまり感情を表に出さないタイプなんです。だから、最初のころは私ばかりが妊活で感情をアップダウンさせているような気がして、「もう少し寄り添ってくれてもいいのに」と思っていました。そういう不満がケンカに発展したこともありましたね。

ただ、妊活で得た情報や今どんなことをやっているのかといった内容も、粘り強く彼に伝えるようにはしていました。

夫・和希さん:妊活に関する知識量では彼女のほうが完全に上ではありました。ただ、「今からやる治療がどういう目的なのか」といったことはできる限り丁寧に聞き、1つひとつ理解するよう努めていましたね。

稲葉先生のアドバイス

誰もが望めばすぐ妊娠できるわけではありません。子どもが欲しいのか、兄弟をつくるなら何人欲しいのか、自分たちの年齢を踏まえた上で、早い段階で具体的に話し合っておくことをオススメします。また、妊活中も考えはそれぞれ変わっていくもの。スタート地点だけでなく、向かっているゴールが合っているか、時折確認し合いましょう。

妊娠のメカニズムに関する知識は、カラダに変化が起きる女性に比べると、男性のほうが乏しい傾向にあります。だからこそ、大島さんご夫婦のように知識をシェアするコミュニケーションはとても大切です。直接話す以外にも、「この記事、わかりやすいよ」と役立つ妊活サイトを共有するなど、さまざまな方法を試しながら足並みを揃えていきましょう。

また、男性には生理がないため、自分のカラダに向き合う機会が少ないものです。しかし、仮に射精がうまくいっていても、精子の質などの関係で不妊の原因が男性にある場合があります。そのため、不妊の検査は男女一緒に受けるのがベストです。お互いに妊活の当事者としての意識も高まりますよ。

タイミング法の実践は長く続くほど男性側のプレッシャーに

妻・綾さん:私たちの場合、私が卵誘発治療を続けながら、タイミング法に挑戦していました。結果的にはタイミング法を3周期と、終盤にはタイミング法+「人工授精」を行って約1年で妊娠できたのですが、タイミング法に挑戦していた期間は、私と彼でそれぞれ違うしんどさがありましたね。

「今月はこのあたりが排卵日になりそうだから」ということは口頭で彼に伝えたうえで、ふたりで共有しているスケジュール管理ツールでも確認できるようにしていました。

夫・和希さん:仕方がないことではあるのですが、「この日に射精しなければならない」と決められてしまうことにはプレッシャーを感じていました。「ここで射精できなかったら、彼女の1ヵ月の努力が無駄になってしまう」という恐怖が大きかった気がします。それでも「やるしかない」と気合いで何とか乗り切った感じです。

妻・綾さん:私も「こういうのって男性にはプレッシャーになるんだろうな」と思いながらも、自分のことで余裕がなくて。夫側のそうしたつらさにはあまり考えが及ばなかった気がしています。

稲葉先生のアドバイス

タイミング法の日程調整について、妻から夫へストレートに伝える方法は決して悪い手ではありません。そもそもお互いが妊娠を望んでいて、そのために必要なことであるという前提を共有できていれば問題ないはず。

大島さんご夫婦のように、「大体このあたりが排卵日になりそう」と早めに共有して、事前に心の準備をしてもらうのはいい方法です。「はい、明日ね!」と突然言われるよりは、「次の排卵日はこのあたり」という予告があるほうが、心理的な負担は軽くなるかもしれません。デリケートなことなので、お互いにどういう伝え方が良いか、話しておけると良いですね。

男性側のプレッシャーを軽くしたい場合は、お守り代わりにシリンジ法や精子凍結を活用するのもいいですね。シリンジ法とは、マスターベーションで射精した精子をシリンジに入れ、女性の膣に注入する方法。精子凍結は、事前に精子を採取し凍結保存しておく方法です。もしも排卵のタイミングで射精がうまくいかなくても、こういったバックアップを準備しておくと心の余裕にも繋がります。

ふたりで暮らしていく第2のプランも、選択肢に入れておく

妻・綾さん:妊活はストレスや不安との戦いでもありました。続けているあいだはずっと、「早く妊娠したい」と前のめりになっていました。でも、妊活を始めてしばらく経ったころ、夫が「もし子どもができなかったら、2人で暮らせばいいよ」と言ってくれたんです。それを聞いて「ああ、それもそうだよね」とちょっと楽な気持ちになれたのは大きかったかもしれません。

夫・和希さん:僕たちは東京で結婚したのですが、結婚当初からいずれは僕の故郷で暮らそう、と話し合っていました。仕事の都合で「この時期までに移住する」という時期も大体決まっていました。

妻・綾さん:子どもができなくても、そのときはそのとき。2人で引っ越して楽しく暮せばいい。そういうポジティブな選択肢をポンと夫が出してくれたおかげで、気持ちが前向きになったんです。

もちろん心身や経済的な負担もあるのですが、妊活がつらいのは何よりもゴールが見えないから。でも、「もし、子どもができなかったら引越し先で楽しく暮らす」というポジティブな選択肢ができたことで、ふっと気が楽になりました。そんな風に、「自分たちなりの区切り」を見つけておくといいかもしれません。

それから、妊活中はストレスがたまりやすいので、こまめにストレス解消することも心がけていました。私の場合、チアリーディングを長年続けていたので、カラダを動かすのはいい気分転換になりましたね。所属するコミュニティが多いほど、リフレッシュできる機会も増える気がします。会社と家庭だけでなく、趣味や友人との関係など、たくさんの繋がりを作っておくと良いのではないでしょうか。

稲葉先生のアドバイス

妊活がきっかけでふたりの仲が悪化してしまっては本末転倒です。結果がどうであれ、協力しあって乗り越えようとしたプロセスは失われるものではありません。ふたりで取り組んだ妊活が、絆を強くするきっかけになるといいですよね。

大島さんご夫婦のように、「もしも子どもを授からなくても、こんな風に人生を楽しもう」という別のプランを考えておけば、パートナーシップはよりよいものになるはずです。

妊活中に「妊娠しなくては」と視野が狭くなってしまう、というのもよく聞く悩みです。綾さんが実践していた、ほかのコミュニティに所属するというのはとても良い取り組みですね。妊活についても、相手だけでなく、友人や医師など第三者のアドバイスを聞くことで冷静になれることもあります。ふたりで妊活に向き合い続けると疲れてきてしまうもの。そんなときにリフレッシュできる趣味やコミュニティを意識的に持っておきましょう。

これから妊活するふたりに伝えたいこと

妻・綾さん:これから妊活に取り組むおふたりには、「本当に子どもが欲しいかを真剣に考えてみる」「独りよがりにならない」の2つをお伝えしたいですね。

実は、「自分は本当に子どもが欲しいのか?」ということについて、妊活を始める前にしっかり考えられていなかったんです。今振り返ると、妊活中の私は「子どもを持つことが当たり前」「妊娠できないのは悲しいこと」という価値観に縛られて、視野が狭くなっていました。でも、私たちにとって子どもがいない人生が不幸せかと考えると、実はそんなことはなかったのかもしれません。視野が狭くなってつらい思いをする前に、きちんと考えを整理しておくべきだったと思います。

あとは、独りよがりにならないこと。「自分ばかりがつらい」と思い込まずに、そのつらさを話し合って、分かち合っていく。私たちはもう少し、そういったコミュニケーションを取るべきだったのかもしれません。

夫・和希さん:妊活はどうしても妊娠する女性が主体になりがちですが、「じゃあ全部任せるよ」と妻に丸投げしてしまうのは違いますよね。情報はきちんと聞く、教えてもらう、わからない部分は自分でも調べるという姿勢は大事にしたほうがいいと思います。

あとは、「この日に射精しなければならない」というプレッシャーは男性特有のものですよね。そこは無理に性交渉で乗り越えなくてもいいのかもしれません。僕たちの場合はタイミング法を続けましたが、終盤はタイミング法だけでなく、「人工授精」という方法も使いました。一番の目的が妊娠であるならば、自然妊娠かどうかといった形にはこだわらず、より確率が高い方法を選べばいいのではないでしょうか。

稲葉先生のアドバイス

妊娠は女性だけが努力してできるものではありません。男性側も、自分から情報を取りに行く、女性と情報をシェアすることをぜひ心がけてください。子どもが欲しい気持ちの大きさや妊活に取り組みたい時期、妊活への思い入れなどには、温度差があって当然。お互いの価値観や意見を話し合い、尊重し合いながら、細やかなコミュニケーションを取っていきましょう。

長い人生の中で、女性が妊娠・出産できる期間は限られています。「子どもが欲しい」という気持ちが少しでもあるのならば、「いつかは」と先延ばしにするのではなく、ふたりで一緒にライフプランに向き合い、足並みを揃えていく。それがふたりで妊活を始めるスタート地点になるはずです。

【監修】

株式会社ファミワン、産婦人科医・稲葉可奈子先生

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