ひどいむくみは、なぜおこる?
●足のむくみは、うっ血が原因です
心臓から送り出された血液は、ふたたび心臓へもどってきますが、足へ送り出された血液が心臓にもどるには、重力に逆らわなければならないため、強い力が必要になります。このとき、ポンプとなるのが足の筋肉です。
足を動かせば、筋肉が収縮して血液を心臓まで運んでくれますが、動かさなければうまく血液がもどってくれず、下半身に血液がたまってしまいます。そのため、立ちっぱなしの仕事や座りっぱなしのデスクワークなどで長時間同じ姿勢でいると、足はむくんでくるのです。
向こうずねを2、3秒指で押して、あとが残るときは、足がむくんでいる証拠です。
●女性は生理(月経)前にむくみやすい傾向が…
生理前症候群(PMS)の代表的な症状のひとつで、生理開始4~5日前から全身や顔のむくみがおこることがあります。個人差もありますが、むくみのために体重が増える人もいて、ふだんの洋服がきつくなることもあるようです。
これらのむくみは、カラダに水分をため込む働きのある黄体ホルモンが生理前に増えることによりおこります。生理周期(月経周期)に合わせておこるむくみはカラダの自然なリズムのひとつなので、あまりひどくなければ気にしなくても大丈夫です。
また、冷え性により下半身の血液の流れが悪くなり、足にむくみが出ることもあります。
●食生活が原因でおこるむくみもあります
お酒を飲み過ぎたり、塩からいものを食べ過ぎたりすると、翌朝顔がむくむことがあります。塩分のとり過ぎでむくみがおこるのは、体内の塩分濃度のバランスを保つためにカラダが水分をため込むからなのです。さらに、ビタミンやミネラルの不足した偏った食生活も、むくみの原因となることがあります。
●全身の病気が原因でむくみがおこることも
全身のむくみが長く続く場合や、顔がパンパンにはれたり、まぶたのはれが続いたりするようなひどいむくみの場合は、病気が隠れていることがあります。
女性に特有の病気のひとつ甲状腺機能低下症や、腎臓の病気、心臓病などが原因の場合もあるので、内科や婦人科で相談するとよいでしょう。
また、妊娠している人で、むくみがなかなか引かない場合は妊娠浮腫(妊娠高血圧症候群の症状のひとつ)が疑われますので、早めに主治医に相談してください。
むくみを放置すると、静脈にうっ血がおこり、血管がこぶのように浮き出た「下肢静脈瘤」ができることも。
静脈瘤はほうっておいてもほとんどの場合さしつかえはありませんが、ひどい静脈瘤を長く放置しておくと血流障害をおこしやすく、潰瘍ができることも。最近では患部の静脈瘤を抜きとる手術も行われているので、むくみがひどく静脈瘤のある人は、一度血管外科に相談しましょう。
どうすれば、むくみを予防できるの?
●適度に足の筋肉を動かしましょう
日常的におこる一時的なむくみは、予防対策や応急処置でセルフケアしましょう。足のむくみ予防の基本は、長時間同じ姿勢を続けないことです。デスクワークが長く続くときは、ときどき体操をしたり歩きまわったりして、適度に足の筋肉を動かしましょう。足を組むのは、足の血行をさまたげることになるので、避けてください。また、市販されている弾性ストッキングも、むくみ予防に効果的です。
●塩分を控えて、カリウムを積極的にとりましょう
むくみやすい人は、塩分をとり過ぎないように気をつけましょう。とくに加工食品や外食は塩分が多く含まれています。スナック菓子なども要注意です。
一方、カリウムが不足するとむくみやすくなります。カリウムは小豆やじゃがいも、かぼちゃ、きゅうり、トマト、バナナ、リンゴなどの野菜やくだもののほか、海藻類やきのこ類などにも豊富に含まれています。汗や尿で失われがちなミネラルなので、積極的にとるようにしましょう。
むくんでしまったときの対策は?
●マッサージやストレッチで、血行を促しましょう
足がむくんだときは、ふくらはぎのマッサージや、軽いストレッチで血行をうながすとよいでしょう。マッサージは、足の指先から心臓に向かって、リンパを流すようにもみほぐします。
帰宅後は、ゆっくりと足湯をするのも、足の疲れをとり、むくみ解消におすすめです。寝るときにクッションや座布団のうえに足を乗せるなど、足を高くして寝るのも効果的ですよ。
●顔のむくみ、はれは、冷やすのが〇
飲み過ぎなどで顔がむくんだときは、水にぬらしたタオルに氷をはさんで、5分ほど顔に当てるとむくみが引いてきます。朝忙しくても、メイク前に簡単にできますから、おすすめです。
重いむくみでも、首や肩の緊張をとると、顔の血流がよくなってきます。そのため、肩をもんだり、首を軽くマッサージしたりするのもよいでしょう。
また、まぶただけがはれぼったいというときは、化粧水をコットンにたっぷりと含ませ、パックする感覚で5分ほどまぶたのうえに乗せてみてください。スーッとはれが引いていきます。
●漢方で改善することも
生理前のむくみの場合は、PMSの症状を軽くする治療が、むくみ解消につながることがあります。同じように、冷え性からくるむくみの場合も、冷え性の改善でむくみが取れることがみられます。PMSや冷え性の治療に漢方薬を用いることがありますが、むくみ解消にも、漢方薬でゆっくり体質を改善していく方法が効く人もいます。一度、漢方薬局や婦人科などに相談してみるのもいいですね。薬局でも、医師の処方を持っていけば保険適用となります。
【記事監修医】
西山紘子先生
社会福祉法人 恩賜財団済生会支部東京都済生会
東京都済生会中央病院/産婦人科医